連載・特集

2018.11.13みすず野

 「ありえたかもしれない人生のいくつかを失いながら、人は歩む」。かなり前だが、ある新刊の表紙カバーに記されていた言葉で、記憶に刻まれている。逆に言うと、人は誰もが日々選択しながら、たった一つの道を歩む◆一人一人のそうした人生の重なり合いが、社会をつくり、ひいては歴史を築く。いい言葉にめぐり合うことがある。書物の中で発見したり、話していた相手の口から聞けたり、古い流行歌の歌詞であったり、映画の登場人物のせりふだったり。その言葉をメモしたくなって、メモを頭のなかで反すうしてみる。声にして読んでみることもある◆「いいなあ、そのとおりだ」と、豊かな気持ちに満たされる。言葉は力を持っている。人は言葉に支えられて生きているところがあり、たった一言で励まされ、あるいは傷つく。言葉を大事にしたい。「美しい行為は美しい言葉から生まれる」と述べたのは、かのゲーテ。それにしても政治家の言葉が軽い。撤回するくらいなら、最初から口にするな、と言いたい◆国会答弁で失言を繰り返す新閣僚、放言し続けてなお、内閣ナンバー2にとどまっているお方も。あゝ。