連載・特集

2018.10.20みすず野

 阪神ファンは切り替えが早い。開幕戦で勝つと「今季は全戦全勝かも」と本気で思い、借金がかさんでも「残り全て勝てばいい」と気を吐く。負け試合後の酒場で見ず知らずの人に「惜しかった」と話し掛け、17年ぶりの最下位にも「来季は優勝」と前向きだ◆スタンドでは味方の攻撃しか見ない。だから1点でも入ればそのゲームは勝ちとなる。サヨナラ勝利やホームランの場面しか覚えていないし、しかもそれを何十年も語り継ぐ。ところが今季は完封負けが14度もあり、うち8度が甲子園だった。これでは鬱憤がたまる◆人生にも「負け」は付きもの。「勝ち」しか許さない空気はどこか窮屈で不健康だ。敗因の分析や負けた悔しさが次の勝利へつながる。子供たちに伝えよう。負けたっていい。また頑張ればいい。勝つことしか考えてないから周りが見えなかったり、データを改ざんしたり◆名古屋へ向かう高速道のパーキングで今秋「松本猛虎会」と掲げたバスを見掛けた。派手な服を着た品のいい紳士淑女が降りて来る。皆きょうの勝利を信じているから笑顔だ。この心理、常に優勝が求められるチームのファンには分かるまい。