連載・特集

2018.9.8みすず野

 深田久弥は『日本百名山』で、御嶽山の魅力の無尽蔵ぶりを書物になぞらえ「どのページを切っても、他のどの本にも書いてないことが見つかるだろう。そんな山である」と結ぶ。山容の神々しさや信仰のあつさ、うっそうとした森林の見事さ―をつづった文章は初版から半世紀たった今も色あせない◆どこに居ても湧き立つ入道雲を見ると、黒沢道8合目で仰いだ天を突く噴煙が脳裏によみがえり、いまだに胸騒ぎが収まらない。登山道を抜きつ抜かれつして三ノ池まで行き、戻ったのが昼前だった。もし山頂へ向かっていたら◆山小屋のスピーカーや補強された屋根、山頂直下に完成間近というシェルター―いずれも噴火前は無かった。自衛隊の車両が通い慣れた道路に連なるあの異様な光景を忘れない。亡くなった人たちの冥福を祈り、手を合わせ続けることが一人一人の安全意識につながると信じたい。胸騒ぎはこれからもきっと続く◆入山規制が解除されたら山頂まで登ろう。山小屋に泊まって星空や雲海を見よう。まだ知らない魅力を探しに。自然と歴史、人々の思いがつくる懐の深さが遠来の客を引き寄せる。そんな山である。