連載・特集

2108.8.12 みすず野

 高田馬場の駅前で拾ったタクシーのラジオはニュースやプロ野球中継でなく、氏名を延々と読み上げていた。昭和60(1985)年8月12日。日航機が墜落したと運転手から聞き、後刻に520人の犠牲を知る。蒸し暑さが都会の夜深をいっそう重苦しくした◆ひいきの球団が21年ぶりにリーグ優勝して初の日本一にもなった年だから脳裏に深く刻まれ、今も近くの年号を聞けば「バックスクリーン3連発」の何年前(後)と指を折る。松本では島内に音楽文化ホールが開館し、豊田商事の詐欺商法が世間を騒がせた年である◆小紙が毎週月曜日付に連載している「さらば平成―私の物語」を読むと、人にはそれぞれ大小のドラマチックな出来事や年があって、そこを起点や転機にその後の人生を切り開いたことが分かる。独りでなし遂げる成功もあるだろうが、支えてくれる存在がいれば大抵の苦難は乗り越えられる、と勇気づけられた◆「♪上を向いて歩こう、涙がこぼれないように」と小欄の稿を脱しようとしたら群馬県防災ヘリ墜落の報が入った。鉢伏山の悲しみがよみがえり、書き出しとの符合に暗然となる。空で何があったのか。

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