連載・特集

2018.8.2 みすず野

主に中年男性対象のライフスタイル雑誌が、夏のローカル線を特集していた。ローカル線に「夏の」が付くと、いっそう郷愁を感じさせ、魅力を増す。実際に乗れば速度が遅いうえ、各駅停車が多く、尻や腰が痛くなって、そんなに心地のいいものではないだろうが◆だいたい現役世代には、ローカル線でゆっくり、のんびり旅している暇はない。子育てから解放されても、休日はそれなりに用事が入ってくるし、短い夏休みを有効に旅行しようと思えば、特急や新幹線で目的地を目指す。要するに「夏のローカル線」の旅は、いつの日かの夢、憧れなのである◆ローカル線の一つ、JR宗谷本線は、日本最北端の地に向かって北上する。旭川~稚内間(総距離260キロ)に53の駅があるが、ほとんどが無人、特急で4時間、普通列車だと6時間半かかる。旭川から9番目の駅は塩狩。三浦綾子の小説『塩狩峠』の塩狩だ◆明治末期に起きた鉄道事故で、自らの命を投げ出し、大勢の乗客を助けた青年がモデルの物語。若いころ読んで感動した。現地には記念館と、「殉職の地」の碑が建っているという。行ってみたい。そう、いつの日か。