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2018.8.10 みすず野

 「茄子が出るようになると、よく洗って薄切りにし、塩でもみ、さらに醤油を落して食べる。この茄子が旨くて旨くて、たまらないのだ」と書いているのは、時代小説家の池波正太郎(『江戸前 通の歳時記』集英社文庫)◆池波のナス好きは、太平洋戦争中の海軍時代にまでさかのぼる。ナスのおいしい食べ方、人それぞれだけれど、味噌炒めがいい。玉ネギ、ピーマンなどと炒めて出されると、ご飯が進む。そんな夏野菜の代表格、ナスを詠んだ句に「ふるさとにただ親しきは茄子の紺」(小寺正三)がある◆盆だろうか、帰郷した際にナスの紺色が目に飛び込んで来て、ふるさとに帰ったことを実感したというのだ。いいなあと思う。ただ、ナスにはこれと言って栄養がない、との通説がある。信州大学総務課から隔月届けられる広報誌「信大NOW」を開いたら、高血圧対策にナスが効果的、と載っているではないか◆ナスには「コリンエステル」なる成分が多量に含まれ、これが血圧を下げる効果を持つ。もう「ぼけなす」なんて言ってはいけないと。古く奈良時代には栽培されていたナス。1400年もの歴史はだてでない。

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