地域の話題

松本死刑囚らの刑執行 真相見えず、住民らに複雑な思いも

 オウム真理教を率いた麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚や元幹部ら7人の死刑が6日、執行された。松本サリン事件の現場周辺に暮らす住民や、被害者と共に教団と闘った司法関係者からはさまざまな思いが聞かれた。首謀者から真相が語られなかったことに対する複雑な胸の内、忘れることのない恐怖の記憶...。松本サリン事件から24年がたち、死刑執行を見届けぬまま他界した被害者、関係者も多い。

 「朝ニュースを見た。花を買って、かあちゃんの仏壇に報告した」-。現場近くに住む男性(73)は昨年73歳で他界した妻の墓前に花を手向け、死刑執行を報告した。長年連れ添った妻はサリン事件後、臭いに敏感になり洗剤や入浴剤を嫌うようになった。「不安や苦しみを抱え続けていたと思う。死刑執行で一つの区切りがついたとしても、死ぬまで事件の日のことを思い出す」と胸の内を明かした。
 地元に古くから暮らす男性(73)は「もっと早く決着がついていたら...」と考え続けてきた。「事件当日、風向きが違っていたら自分が被害者だったかもしれない。同じような事件がまた、起こるかもしれない」。今でも、無差別テロに対する恐怖をぬぐえずにいる。
 松本サリン事件で警察や報道は当初、現場近くに住んでいた事件の被害者で第1通報者の河野義行さんをまるで容疑者のように扱い、人権問題となった。近くに暮らす女性(63)は「首謀者や幹部が死刑になったからといって片付けてはいけない事件。無実の人が疑われたことを私たちも忘れてはいけない」と語った。
 大学生らが犠牲になったアパートには現在も多くの学生が暮らす。昨春から入居する女子学生(22)は「事件を直接知らない世代だけど、これで一つの区切りがついたと思う」と受け止めた。
 オウム真理教松本進出反対の住民運動の先頭に立ち、3年前に亡くなった永田弘さんの三女(49)は、父の墓前で死刑執行を報告した。「松本の地で『やれるだけのことはやった』と父は考えていたと思う。でも、真相が分からないまま死刑が執行されてしまいなんとも言えない気持ち」と静かに語った。