連載・特集

2018.7.7 みすず野

 記憶をたどる。オウム真理教の元代表・麻原彰晃こと松本智津夫被告(当時)の判決公判が開かれた東京地裁の大騒動。14年前、平成16年の早春だった。たった38の傍聴席を求め、4600人を超える人波が抽選会場の日比谷公園にでき、その中にいた◆そこからさらに10年前、松本サリン事件の現場取材にあたふたした。暑い夏だった。狂騒とも言える日々であった...。判決公判の日、傍聴席から見た松本被告の顔は意外に小さく、判決理由が読み上げられる中、時折にやりと不敵な笑いを浮かべた◆サリン事件とは、オウム真理教とは一体何だったのか。サリンを製造し、ばらまいて、社会の破滅と国家の転覆をもくろんだ、とされる松本被告の命令に、入信した若きエリートたちが、なぜ盲目的に従い、無差別テロに突っ走ったのか。頭の中で疑問がぐるぐる回って、答えは見いだせなかった◆松本死刑囚らの死刑執行の報に、深い感慨を抱く一方、何を語るでも謝るでもなく、消え去ったことに虚しさを覚える。将来に希望のない、孤独な、無機質な若者は当時より増えているだろう。狂気の集団が、再び出現しないとも限らない。

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