連載・特集

2018.7.10 みすず野

 松本城下の女鳥羽川より北の高齢の人たちは松本神社を今も古称の「五社」と呼ぶ。城主戸田氏の祖霊をまつり、きょうが宵祭り。祭礼の日の雨を「暘谷様の涙雨」と言い伝える◆カップルで参拝したら別れると、昭和20年代に女子高校生がささやいていたというから年季の入った都市伝説だ。お城の堀に身を投げた不器量な姫君の焼きもちだと伝え「松本城に上ったら~」「埋橋を渡ったら~」と語り継がれた。戸田の殿様の康長と、徳川家康の異父妹の松姫との間に生まれた永兼が暘谷様である◆長男でありながら病気で亡くなり、藩主になれなかった。そのたたりを畏れ、まつられた。松姫は康長が松本に入る29年も前に亡くなっている。それなのに松姫が伝説となったのは「松本の人々が永兼と松姫の思いを想像し、悲しい物語を作り上げた」。松本城管理事務所の研究専門員だった青木教司さんの講義録から引いた◆「涙雨」は今年も降るだろうか。雨はもうたくさんだ。西日本を中心とした豪雨被害の悲報に心が痛む。当地では王滝村の滝越地区へ通じる村道が崩落した。観光客を導く道でもあり、一日も早い仮復旧が待たれる。