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蚕の雌雄鑑別スタート 松本の高原社 卵出荷へ

 蚕種(蚕の卵)を製造販売する高原社(松本市元町1)で、卵を産む成虫になる前のサナギを繭から取り出して、雌雄鑑別する作業が始まった。6月下旬以降、産卵された卵が各地の養蚕農家に出荷される。生産量は最盛期の100分の1程度になっているが、松本の発展を支えた伝統産業を守り続けている。

 山梨県の養蚕農家が育てた繭が、12日から松本市梓川梓の同社製造所に入荷している。14日は鑑別歴30年以上のベテラン社員が、サナギの尻を見て、手際よく雄と雌に分けていた。温度や湿度を管理しながら2種類の雄雌を交配させる。
 高原社は、品質に優れる「日本種」、糸に強度がある「中国種」と呼ばれる二つの蚕の原種を交配させて、双方の優れた特性を継承させる「ハイブリッド法」で蚕種を生産している。この方法は、松本製糸場を率いた今井五介が大正時代に全国に先駆けて松本で普及させ、その後国内外に広まった。
 高原社によると、日本の養蚕業は戦後、昭和30年代にピークを迎え、その後は産業構造の変化で衰退した。蚕種をつくる業者はかつて全国に230社ほどあったが、現在は4社を残すのみという。全国に約300戸ある養蚕農家も大半は75歳以上という状態で、伝統産業が維持できるかも懸念されている。
 近年、蚕の繭は化粧品や医薬品の素材としても注目されているといい、同社の草間幸男常務(65)は「まだまだ捨てた産業ではなく高付加価値の活用法を探っていきたい。松本でかつて養蚕が盛んに行われていたことも多くの人に知ってもらえたら」と話している。