連載・特集

2018.6.30 みすず野

 人はなぜ絵を描くのか。「11人は美女だらけ」と題したアクリル画には人の顔と顔の隙間に「びじょ、美女、BIJO」の文字がびっしりと油性ペンで書き込まれている。動物や妖怪、夢に現れた雲の輪、太陽が描かれ、鮮やかな色彩が際立つ◆安曇野市穂高の画家・カミジョウミカさん(41)の個展会場である。骨が変形する先天性の病気と闘い、車椅子生活の中で「描いている時は痛みを忘れられる」と、ほぼ一日じゅう筆を握る。「見た人が楽しい気持ちになり、笑ってくれたら」との言葉を額面通りに受け取っていた◆美術館の学芸員の目で創作活動を長年見てきた長尾小百合さん(35)=松本市梓川倭=は「明るさだけではない」と話す。痛みや障害のつらさを乗り越える手段であり「描くことが生きる全て。闘いの過程が色彩の中に」と。つらい時に努めて明るく振る舞うのは苦しい。メッセージを生きる糧にしてもらいたいとも願った◆なぜ描くかの問い掛けは見る人を元気にし、気持ちを前向きにさせる芸術の力だ。カラフルな平面や立体の造形の中に深淵をのぞく思いがした。小社安曇野支社・山光ホールで7月8日まで。