連載・特集

2018.6.10 みすず野

 約10年がかりで復元なった名古屋城本丸御殿の写真が紙面を飾った。総ひのき造りをうたう建物の主要材に木曽ヒノキが使われ、木曽漆器の職人が漆塗りを担ったと記事にある。手前に写る木曽町の原久仁男町長の表情が誇らしげだ◆戦災で焼失する前の本丸御殿が建てられた江戸時代初め、木曽谷では織豊期から続く城郭や社寺の建築ラッシュで良材が切り尽くされた。そこで「木一本首一つ」と伐採を禁じる。木曽の森林が今日あるのはこの森林保護施策のおかげ。尾張藩の重臣たちもまさか350年後の建て直しに役立つとは思い及ばなかっただろう◆復元事業を記念した植樹イベントが木曽町の町有林で開かれ、毎年100人以上の名古屋市民が訪れてヒノキや広葉樹の苗木を植えた。家族や友達と楽しそうにくわを振るい「御殿の用材を育ててくれて、ありがとう」「水道水を飲めるのはこの森のおかげだ」との声も聞いた◆本丸御殿を訪れた人たちがヒノキの香りに触れ、木曽へといざなわれたら。木曽の住民の誇りにつながればとも願う。「尾張名古屋は城で持つ」と歌われる。繁栄を保つという意味ならば「木曽で持つ」だ。