2026.3.24 みすず野
2026/03/24
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「今朝、私は蕗の薹を細かくちぎってみそ汁に浮かべました。部屋の空気までもが早春の気に満ちたように感じられました」と俳人の茨木和生さんは記す(『旬の歳時記』朝日新書)。文頭には師である右城暮石の「蕗の薹焚火に焼きて苦さ増す」を置く◆やはり俳人の宇多喜代子さんは、それを「吸い口」というと解説する(『厨に暮らす』NHK出版)。「当節、吸い口ということばを耳にすることが少なくなりましたが、木の芽や柚子など、汁物に浮かべて香りを楽しむツマのことです」と◆蕗の薹は土から出たばかりの、まだ花が咲かない蕗の花穂で、まず吸い口で楽しめ「あつあつの味噌汁に散らすと、鼻先に春がいっぱい広がる感じがします」と語る文章の間から、その香りが漂ってくるようだ。蕗みその作り方も紹介している◆独特の苦味は子供は苦手だが、年を重ねるに連れて春の便りのように感じるから面白い。茨木さんは「家内は蕗の薹みそを作るのが上手でねぇ。それは保存が利くので酒の肴にはもってこいです」と師が語った言葉をこの季節になると思い出すという。今春はまず天ぷらにした。次は蕗みそにしよう。



