2026.3.18 みすず野
2026/03/18
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大根を干してぬかと塩で漬けたものが沢庵で、これを知らない日本人はいないだろうと思われる。『広辞苑』(岩波書店)には「沢庵漬」の項目で「沢庵和尚が初めて作ったとも、また『貯え漬』の転ともいう」とある◆沢庵和尚は江戸期の禅僧の沢庵宗彭(1573~1645)で三代将軍の徳川家光に重用され、品川に東海寺を開いたと『コンサイス日本人名事典』(三省堂)に載る◆沢庵和尚が初めて作ったという説は、あくまで説にすぎないという演劇・演藝評論家の矢野誠一さんは、沢庵と名付けられた理由に「東海寺境内にある沢庵和尚の墓石が、漬物の重石に酷似しているからとするものがある」と聞いては「貯え漬」がなまったからというほうが自然な気もするという(『落語長屋の四季の味』文春文庫)◆花便りとともに誰かが演じるようになるおなじみの落語「長屋の花見」。矢野さんは落語の中で、卵焼きを沢庵で代用させようという発想は非凡で「いじましくも哀しい知恵に、そこはかとないユーモアの感じられるのがいい」と。沢庵の卵焼きでも、大根漬けのかまぼこでもかまわない。花見を楽しめる世の中がいい。



