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2026.3.12 みすず野

2026/03/12
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 「足を棒にして一軒一軒のぞいて歩くのは集書の基本ではあるけれど、よい本は店頭より奥にしまい込んである社会主義国の古本屋では、ズバリ奥に入り込めるかどうかでまず勝負は決まるものとみていい」と言語学者の千野栄一さん(1932~2002)は書いた(『プラハの古本屋』大修館書店、のち中公文庫)◆この本は戦後第1回目の交換留学生として、プラハで学んだ著者の古本屋店主との交流などを語ったエッセー集。昨夏に文庫化され最近も新聞広告が出ていたから、読まれているようだ◆『ブダペストの古本屋』(恒文社、のちちくま文庫)は、言語学者の徳永康元さん(1912~2003)がハンガリー滞在記や古書収集の旅などをつづったエッセー集。「古本の署名」という1編では、有名作家の署名本にはいい加減な偽物があり簡単に信用できないという◆場末の古本屋の棚をのぞいていたら、一流大家たちの作品集が著者署名本として並んでいて驚く。だがそれにしては値段が安すぎる。じっくり見ると、達筆ではあるが「何と皆まったく同一の筆跡だった」。両著ともどこかユーモラスで温かい筆致がうれしい。

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