0000日(木)
2025年

2026.3.4 みすず野

2026/03/04
後で読む

 「日本酒をあたためるのに南部鉄瓶のミニチュアのものを使っている」と、詩人の諏訪優は「南部鉄瓶」と題したエッセーを書き出す(『東京風人日記』廣済堂)。数年前に現地で求めて、2合近く入るという◆「黒々と光り、小型ながら重量感もあって、酒は火にかけて二分もすれば熱く燗がつくし、なかなかさめない」。ものみな寝静まったような深夜に、この鉄瓶から酒をついで一人ちびちびとやるのは実にいいものだと◆暖房は火鉢とこたつだった昭和16(1941)年12月8日に太平洋戦争開戦。火鉢の上には南部鉄瓶が湯をたぎらせていた。その鉄瓶がいつの日か消えた。軍艦や大砲の一部になるのだと父に聞いたことを思い出す。「おとなになってから、鉄もダイヤも出さなかった」人が大勢いたと知る。そしてこうつぶやく「平和はありがたい。伝統は美しい」◆「都市鉱山」は、スマホやパソコン、自動車などに含まれているさまざまな金属資源を、鉱山にたとえた言葉。中国のレアアースの輸出規制で、その重要性とリサイクルが再注目されている。80年以上時が過ぎても抱える問題は南部鉄瓶の頃と変わらないような。

関連記事