2026.2.23 みすず野
2026/02/23
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昨年亡くなった作家の嵐山光三郎さんは『文人悪食』(マガジンハウス)で、芥川龍之介の食生活を「芥川家は質素で一汁一菜であったが、芥川は鰤の照り焼きが大好物で、それがあれば他にはなにもいらないというほどだった」と紹介している◆ブリは成長するに連れて呼び名が変わる出世魚の代表。関東ではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、関西ではツバス、ハマチ、メジロ、ブリとなる。それぞれの大きさはおおむね20センチ刻み。富山県、石川県などでは別の呼び方もある。いずれも終点は「ブリ」になる◆環境省のホームページには養殖魚の代表で、切り身や刺し身がスーパーで普通に販売されて、手の出ない高級魚ではなくなってきたとある。一方で天然物は別格で、特に冬は「寒ブリ」と呼ばれ高価で取引されるという。俳句では冬の季語で「鰤釣る」「鰤網」などもある◆随筆家の江國滋さんは「二月のうまいもの」として「刺身も照焼きも結構であるが、寒鰤のあらと大根の炊き合わせが、私の好みである」と『きょうという日は』(美術年鑑社)に書いている。寒い夜に大根をふうふう吹きながら食べるのはささやかな喜びだ。



