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2025年

2026.2.16 みすず野

2026/02/16
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 「巻きあげた毛鉤を机に並べて、さて、今年はどこで初釣りをしようかなど、意中に去来する手近な川や遠い川にとりとめもない想いを馳せていると、樹間をわたる風の音や瀬のざわめきが胸によみがえってくる」と、釣り研究者で、渓流釣りのエッセーを数多く発表した山本素石(1919~88)は「春近く」と題した1編に記す(『新編渓流物語』ヤマケイ文庫)◆毛針を使った日本の伝統的な釣り「テンカラ釣り」の伝道師としても知られた。渓流が禁漁となる冬は、道具箱を書斎の片隅に出しておき、気が向くと毛針巻きに精を出したという◆毛針に使う鳥の羽の入手に苦労したが、代用品として付けまつげを用いた仲間がいた。長持ちして「鳥類保護の見地からもなかなか殊勝な思いつき」ではあったけれど、かなり高価な一品になったと◆きょう、いくつかの河川で渓流釣りが解禁される。何度か取材をしたが、川面を渡る風は冷たくてとにかく寒かった。それでも「休みを取って来た」という釣り人がどこにも必ずいて、頬を真っ赤にしたうれしそうな笑顔が忘れられない。雪が降り続いた年もあった。さあ、今年はどうだろう。

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