2026.2.12 みすず野
2026/02/12
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信州は全国で2番目に酒蔵が多いと聞く。中信も地酒が豊富で、あれこれ買い求めては味わっている。なじみのある地名などが銘柄に入っていると、そのラベルを眺めるだけでも楽しい◆「世界のいかなる酒であろうと、固有の土地には、酒を熟成させるのに不可欠な歴史と文化環境があって、さしずめ日本という土地なら、日本酒の甘、酸、辛、渋みの微妙なニューアンスを味わう舌こそ、日本の伝統ということになる」と詩人の田村隆一さんは『自伝からはじまる70章』(思潮社)に書いた◆酒をこよなく愛した詩人は、全国的に知られた灘の酒が北海道で出てきた味気なさをいまだに忘れられないと嘆く。それは確かに名品ではあるが「地酒なら地酒で、誇りを持って出すがいい。その土地の水と土の味を賞味するだけで、ぼくは満足する」◆最近の収穫はなかなか関取になれない力士のような名前が付いた東信の地酒。店頭で初めて手にした。詩人はいう。「日本酒を二本手酌でゆっくり飲み、しずかに立ち上がって、店を出て行くまでには最低三十年かかる」と。「酒を愛すこと、酒そのものを愛するためには礼儀がいる」のだと。



