2025.12.30 みすず野
2025/12/30
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年の瀬によく耳にする古典落語に「掛け取り」がある。大みそかの話で、長屋住まいの夫婦が、やって来る借金取りを追い払う様子で笑わせる。掛け取りは江戸時代の言葉で、現代風に言い換えると借金取りの意味になる◆江戸時代の支払いは、掛け売りという方法で、代金を後払いにする商習慣だった。クレジットカードのない信用販売で、支払日は盆と暮れの年2回。その時期が来ると、店の者が代金の回収に歩いた。それを掛け取りといい、その算段がつかない庶民はあの手この手で言い訳を考え、支払いを先延ばししてもらおうとした◆その取引内容を記した帳簿を大福帳、通い帳といったそうで、それをもとに掛け取りに歩いた。年が間もなく暮れるというある夜、息子のかたきの商家に忍び込んだ盗賊が、金品は盗まずに帳簿をごっそりと盗み出し、川に流すシーンを描いた時代劇があった◆幸いそんな掛け取りがやって来る心配はないが、自慢できるような蓄えもない。ただ地道に毎日を過ごして364日。あと1日で今年も暮れる。持たない身はなんとも気楽ではある。年を重ねても健康であることに感謝して行く年を送ろう。



