0000日(木)
2025年

2025.12.12 みすず野

2025/12/12
後で読む

 スーパーの売り場には鍋つゆやスープがずらりと並ぶ。こんなところにも季節がある。食卓のカセットガスこんろを囲むだけで暖かくなる。カキ鍋、寄せ鍋、タラちり、水炊き、湯豆腐など鍋物はいくらでもある◆「一体この鍋料理などというものは元来が直でくだけたものであるから、畏まって頂戴したのでは決してうまくない」とドイツ文学者の髙橋義孝はいう。「やれ味が薄いの生煮えだのと、文句を言い言い食べなければ、どうも本筋ではないようである」と語る(『蝶ネクタイ先生の飲み食い談義』河出文庫)◆長く横綱審議委員で委員長も務めた。相撲部屋の鍋は、1回に食べきってしまう分量しか入れない。中身がなくなると、また1回分の材料を入れる。こうすると材料の持ち味が生きると説く。もう一つのこつは火加減。相撲部屋の場合は地位の一番上の力士がみるようで「自分の好みに合わせよう」ということだろうと◆鍋のしめもうどん、ラーメン、もちなどさまざま。翌朝、雑炊にするという手もある。帰宅して、鍋がぐつぐつ音を立てている部屋に入った途端、眼鏡が真っ白に曇るのは、幸せの一つの姿かもしれない。

関連記事