2025.12.9 みすず野
2025/12/09
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師走の日々が進んで行くと、落語の「時そば」を聞きたくなる。寒い時期の話で、先が読めていても楽しめる。てんびん棒を担いで歩くそば屋をだまして、1文ごまかすだけの短い内容なのに、演者の特長がよくわかる◆そばは16文。最初に出てくる男が、勘定で銭が細かいから手を出せとそば屋のおやじに言い「ひいふうみい」と数え、八つの後「何刻でえ」と聞きおやじが「へえ、九ツで」と答えた後「10、11」と数えて1文ごまかすのが九ツ刻◆それを陰から見ていて、翌晩見たままにまねをする男が失敗するのが四ツ刻。八つまで数えてから「何刻でえ」と聞き「四ツで」と答えられ「いつ、むう、なな」とそば代を余分に支払うはめにあう。午前0時ころの成功例を見て、午後10時頃に失敗したことになる◆落語家のレコード、CDを制作、落語会のプロデュースなどを手がける京須偕充さんは「だから演者はさりげなく、翌晩、小銭を用意するとすいぶん早く外へ出た、と註を述べるのである」と解説する(『これで落語がわかる』弘文出版)。落語家が聴かせてくれる話芸はもちろんだがそばをすする音の違いも楽しみの一つだ。



