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2025年

2025.12.08みすず野

2025/12/08
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 「痛烈に想いだすのである―」と、作家の半藤一利さんは書き出す。「昭和十六年十二月八日朝、まだ小学校の五年生であったわたくしは、ほとんどの大人たちが、小学校の先生たちが、晴れ晴れとした顔をしていることに奇異を感じたものであったことを」(『永井荷風の昭和』文春文庫)◆日本軍がハワイの米国軍基地を攻撃し、太平洋戦争が始まった日である。半藤さんは『昭和史1926―1945』(平凡社)で、当時の文化人として評論家の言葉を挙げる。中島健蔵は「ヨーロッパ文化に対する一つの戦争だと思う」と◆小林秀雄は「大戦争がちょうどいい時にはじまってくれたという気持ちなのだ」と戦争を肯定。亀井勝一郎は「維新以来我ら祖先の抱いた無念の思いを、一挙にして晴すべきときが来たのである」とはっきりと言っている◆半藤さんは「この日のことを後に多くの人が回想していますが、戦後に書かれたものはあてにならない」と指摘する。「戦争に反対であったが」というような形で報告しているが、当時は「たいていが万歳万歳の叫び声をあげています」と。歴史を学ぶ。同じ過ちを繰り返さないために。

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