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2025年

2025.12.1 みすず野

2025/12/01
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 ニューヨークの古いビルの1室をオフィスとする会社に、3人の社員がいる。そこに3人が集まるのは年に1度だけ。1年間に会社の口座に入金された膨大な収入をそれぞれの個人口座に配分して解散する。その金額は普通の人の生涯賃金にあたるほど。3人は次の年の同じ時期まで遊んで暮らす◆「これは世界中の音楽産業に携わるひとびとのあいだで語られている『神話』であるが、真偽のほどは定かでない」と作家の三田完さんは語る(『歌は季につれ』幻戯書房)。3人が勤めるオフィスはクリスマスの曲「ホワイト・クリスマス」の著作権を管理する音楽出版社ということになっている◆音楽出版社は楽譜を出版する権利を持ち、その権利はCD、放送、舞台、カラオケなど、楽曲を扱う全てのメディアにわたる。「世界中で十二月になれば盛んに流れる『ホワイト・クリスマス』なればこそ」その「神話」がまことしやかにささやかれるのだと◆きょうから師走。クリスマスが近いと教えてくれるのがこの曲だろう。昭和100年、戦後80年の1年がもうすぐ幕を閉じる。そのメロディーのように、穏やかに暮れていくことを願う。

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