2025.11.29 みすず野

　手堅く安定した市政運営で多くの信任を受けてだっただろう。安曇野市の太田寛市長は先月の選挙で無投票当選を果たした。２期目でさらに市政の発展充実を期待していた市民も多かったはず。突然の訃報に安曇野市はもちろん、近隣市町村にも悲しみが広がる◆文化人らしく同市出身の小説家・臼井吉見の長編歴史小説『安曇野』の復刊に力を入れた。絶版になっていた同書を若者にも読んでもらいたいとの思いもあった。復刊費用にクラウドファンディングも活用したのは市長のアイデアだった。ネットを通して『安曇野』を大勢に知ってもらえれば│と◆今春『安曇野』の文庫版が完成すると、市長は「何回読んでも新しい発見がある」とＰＲした。登場人物が２０００人以上いて読破が難解な小説でも知られる『安曇野』。作ってみたけれど、という可能性もあったが、勘所はさすがだった。作った１１００セットは数カ月で完売した◆『安曇野』の大河ドラマ化へ市が動き始めたのは令和４年。市長は「大河ドラマ化は道が遠いね。まだまだこれから」と昨秋に語っていた。実現を楽しみにしていただろう。ぜひ引き継いでほしい。