2025.11.26 みすず野
2025/11/26
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日本酒の広告が続けて小紙に掲載された。商品紹介の文章をじっくりと読み、写真にしばらく見入る。一升瓶というのは洋酒などに比べ、どこかあか抜けないデザインだと思いつつ、その容量の1・8リットルは実に絶妙だとも感じる◆中信は酒蔵がいくつもある。思いつく銘柄を挙げろといわれれば、両手くらいはすぐ指を折れる。20年前の木曽版発行に伴い、一時期木曽の酒をいろいろ飲み比べた。選択の幅が広がった喜びは今に続く◆「酒を飲む瞬間は、生きつづけたその人の到達したある一点である」と、作家の武田泰淳は「杜甫の酒」と題した随筆でいう(『日本の名随筆・酒』作品社)。「盃の中と外には、社会と天地が厳として存在し、酒飲む人の手先をも支配している。泥の如く酔った人のかたわらで、人は死に、国は亡び、友は去り、火は燃え、水は大地を蔽うのである。酒飲む人はまさにその場所で飲んでいる」と続く。昭和22(1947)年に書かれた◆年中冷や酒を味わうことが多い。久しぶりに温めた酒をあぐらをかいてちびちびやっていたが、この1編を読み背筋が伸びた。辛口が好みではあるけれどこれは全身にしみる。



