2025.11.24 みすず野
2025/11/24
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血液型やえとなどで性格や人柄を判断しようという方法は人気が根強いようだ。それの一つに犬派猫派の分類がある。夏目漱石の孫の半藤末利子さんは「漱石は犬派である」という驚くようなタイトルのエッセーを書いている(『硝子戸のうちそと』講談社)◆「世間的に漱石と言えば猫、猫といえば漱石と言われるほど猫と親密な関係があるように思われている」。初めて書いた小説『吾輩は猫である』で一躍文名をはせたのだから当然だ◆漱石が熊本時代に飼い犬が人をかみ、巡査が家に来た。夫人は平謝りしているのに漱石は「犬は利口者で、家の者や人相の良い者には吠えるはずもない」などとへりくつをこねた。2度目は巡査の妻にかみついた。巡査は怒鳴り込むが、毎朝ごみを漱石の家の前に捨てていく女性がいて、それが巡査の妻と気づいた漱石が逆にやり込めたという◆「東京でも犬に上等でステキな名を授けている漱石は(中略)猫より犬の方が好きであったのでは」と。半藤さんはそんな血を継ぎ犬が好きだが「もっと上手に文章を書ける筆力と文才の方を受け継ぐことができたらよかったのに…」と控えめに結んでいる。



