松糸道路を地域の起爆剤に まつもと道路交通考・第6部④ 現代版「塩の道」計画30年余
松本地域と新潟県糸魚川市を結ぶ地域高規格道路が「松本糸魚川連絡道路(松糸道路)」だ。信州に塩を運んだかつての「塩の道」(千国街道)とほぼ同じルートで、産業や観光の発展、災害への備えや医療連携の強化を図る狙いがある。全長100キロで長野県側は約80キロを整備する。起点となる安曇野市内に新設する「安曇野道路」は完成目標を令和15年度に見据え、年明けにも着工する運びとなっている。
安曇野道路は長野自動車道に設ける仮称・安曇野北インターチェンジ(IC、豊科光)から犀川右岸を北上する。三川合流部(犀川・穂高川・高瀬川)に造る橋を渡り高瀬川右岸道路(県道有明大町線)までの約4キロで総事業費は250億円を見込む。「豊科出入口」のほか明科、穂高南、穂高北にIC(いずれも仮称)を設ける。
松本糸魚川連絡道路の起点を巡っては、平成6(1994)年に中部縦貫道に新設する波田ICとする当初計画が打ち出された段階から地域住民の合意が得られず、いったん白紙状態になった。県は繰り返し複数のルート案を提示してきたが、優良農地の喪失や景観阻害などを懸念する地元の反対運動で決定に至らなかった。県は市民と協議を重ね、令和2年にようやく現案に決まった。実に26年の歳月を費やした。
当時、明科地域の住民らとルートの再検討を求める期成同盟会を立ち上げて活動した元会長の市川末登さん(77)は「安曇野の景観や農地を守りたかった。現計画には大勢の人の思いが込められている。地域が活性化し後世へとつながってほしい」と願う。
市は沿線で産業立地の受け皿づくりも進める。市観光協会の望月淳利事務局長(63)は「観光交流のハブ(結節点)となり、日本海と太平洋の人・物的拠点になる」と話す。山岳観光面で山麓へのアクセス性や周遊性の向上にも期待する。
一方、安曇野道路以北については高瀬川右岸道路や国道148号などの現道を活用し、新設区間やバイパスと組み合わせて整備する方針だ。高速道路がない大北地域にとっては観光促進や企業誘致などへの期待は高い。県は昨年1月、大町市街地に近い「最適ルート」を示した。地域住民からは地域分断によるコミュニティーの崩壊、生活環境や景観の悪化などについて不安の声が上がる。県は12月、市内各所で説明会を開き、道路計画の概要を示す。




