2025.11.20 みすず野
2025/11/20
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「狭いながらも楽しいわが家/愛の灯影のさすところ/恋しい家こそ 私の青空」。翻訳家・柴田元幸さんは、昭和2(1927)年に米国で大ヒットし、日本でも翌年大流行した「私の青空」の一節を堀内敬三訳で紹介しながら、原詩を翻訳する◆「笑顔に暖炉、心地よい部屋/バラの花咲く小さな巣/モリーと僕/それに赤ん坊の三人/僕らは幸福 私の青空」。「一般に日本語の歌詞の場合、伝えることのできる情報量は英語よりずっと少ない」という◆堀内訳が特に見事と思うのは「狭いながらも楽しいわが家」の部分。日本語のものの感じ方の違いを計算に入れ「原詩を微妙にずらしていることがうかがえる」(『柴田元幸ベストエッセイ』ちくま文庫)のだと◆昨年死去したフォーク歌手・高石ともやさんは、海外の歌に日本語の歌詞をのせる名手だった。ボブ・ディランさんの「時代は変わる」には1960年代末、こう歌詞をつけた。「国会議員の先生政治家らしく進んでください/外では戦いが荒れ狂っている まごつかないでくれ/家ごと嵐に揺さぶられぬように/時代は変わってゆく」。まるで昨日書かれた歌のようだ。



