南松本立体交差化やっと一歩 まつもと道路交通考・第6部③ 踏切の通行止め10年も
10月31日午後10時―。「開かずの踏切」で知られる松本市のJR南松本駅南側にある宮田前踏切が立体交差化工事のため封鎖された。通行止めは約10年間続く。近くに住む男性(86)は「10年間はあまりに長く、生きている間に完成を見ることはできなそう。周辺道路の渋滞が心配だ」と話す。
宮田前踏切は特急列車や貨物列車が頻繁に行き来し、遮断機が下りた状態が1日当たり6時間50分と長かった。都市計画道路・出川双葉線がJR線に交差しており、30年以上前から立体交差化の計画があった。大型公共事業の見直しを図った田中康夫知事の時代(平成12年10月~18年8月)に一度は棚上げとなったが、県は平成19(2007)年度に立体化事業に着手した。
踏切を含む出川双葉線の348メートル区間を対象に、県道が線路をくぐる構造だ。片側1車線で、歩道を含め幅16メートルの道路を設け、総事業費は109億円を見込む。県松本建設事務所は「横断する部分の工事は列車の運行時間外の夜間に実施し、一部は人力で掘削するため時間がかかる」と説明する。
南松本駅南側踏切立体化事業促進連絡協議会長で松南地区町会連合会長の中田景文さん(74)=松本市双葉=は「立体化は地元にとって長年の悲願。期待感が大きい」と話す。ただ、地元での説明会では工期の長さを心配する声が根強かったという。
松本市の臥雲義尚市長は10月21日の定例記者会見で「長期通行止めは市民生活に大きく影響するため、工期短縮を県に要請した」と述べた。市は宮田前踏切の立体交差化に関連し、これまでに都市計画道路の小池平田線と芳野双葉線を新設した。踏切南側線路沿いの南松本石芝線を拡幅する計画もあり、立体交差化完了までに整備する方針だ。
令和10年度末には、踏切近くのなんなんひろば(芳野)西側の更地となっている市有地に市保健所庁舎(仮称)がしゅん工する。市南部は子育て世代の人口が増加傾向にあり、南松本駅南側に市福祉施設の集積が進む中、交通網を改善する立体交差化はまちづくりを進める上で避けて通れない。
中田会長は「将来世代のため、10年間の工期を受け入れたい。交通網が整えば、子育て世代をはじめとする地域住民の生活環境が向上する」と期待を込めた。




