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2025年

2025.11.19 みすず野

2025/11/19
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 スマホは持っているが、ラインは使っていない。それを言うと、同世代の人でも、よくそれで生きていけるなというような反応がある。何の不自由もないが、まあ、時代遅れが性に合っているからなどとごまかす◆歌人の穂村弘さんも同様で若い人に問われ「なんとかなりますよ、と曖昧な答え」をしているという(『本の雑誌』12月号)。スマホもラインも「つい最近までなかったもの」だ。「朝な夕なガラスの窓によこたはる上野の森は見れど飽かぬかも」という正岡子規の短歌を挙げる。子規は病床にあり自由に歩くことができなかった◆部屋の窓にガラスを贈られ、寝たままで透明な窓から外を眺められる喜びを歌っている。ガラスの窓は特別な存在で「窓に『ガラス』があるのは当たり前と思っている現代人には想像しにくいところである」と◆取材の現場にデジタルカメラが導入されて30年近い。撮影した画像をそのまま紙面に反映でき、フィルムカメラに比べて作業時間が大幅に短縮された。これも「つい最近までなかったもの」だ。「紙焼き写真で仕事をした最後の記者」などと社内で言う時が遠くないうちにやってくる。

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