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2025年

奈川渡改良で158号が安全に まつもと道路交通考・第6部② 上高地や乗鞍へ行きやすく

2025/11/19
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 松本市奈川―安曇の国道158号で国の直轄工事「奈川渡改良」(延長2.2キロ)が進んでいる。急カーブと狭いトンネルが連続し、落石や雪崩の危険がある奈川渡ダム直下の区間に二つのトンネルと1本の橋を建設し、道路環境の改善を図る。国は残る新入山トンネル(410メートル)の掘削を12月に始める。
 奈川渡改良は平成23(2011)年に事業化された。令和元年に松本側の大白川トンネル(1534メートル)が貫通し、同5年に大白川大橋(83メートル)の架設が完了した。新入山トンネルが完成すれば改良区間がつながる。完工時期は未定だが、奈川渡改良の完成が見えてきた。事業費は約211億円を見込む。
 一帯は、大型のバスやトラックのすれ違いが難しく、トンネル入り口で対向車の通過を待つ光景が見られる。10分ほど停車する場合もあり、車の通行が滞る。行楽期のピークには1日120台以上の観光バスや路線バスが通過する。県外のバス運転手からは「気を引き締めてハンドルを握る場所」との声が聞かれる。
 158号は同市安曇の山岳景勝地・上高地への唯一のアクセス路だ。訪日外国人客(インバウンド)が増加する中、上高地の来訪者は今季156万人に達した。近隣の乗鞍、白骨、岐阜県高山市にも158号を利用して観光客が向かう。奈川渡改良でトンネルは現道の約2倍の道幅10.5メートルを確保する。改良で通過待ちが解消されスムーズな通行が可能になれば、各地へのアクセスが容易になる。
 長年、地域住民は国道158号の道路改良を県や国に求めてきた。工事現場の近くに住む元松本市議会議員で旧奈川村の村長だった忠地義光さん(81)は「158号は地元にとっては生活道路であり緊急道路でもある」と話し、生活者の立場から安全な道づくりを望む。
 同じ158号では、県が同市安曇の稲核ダム近くで「狸平トンネル」(1060メートル)を建設している。一帯はカーブが連続し、落石の危険がある。忠地さんは、奈川渡改良や狸平トンネル建設による危険箇所の解消を歓迎しながら「まだまだ改良が必要な場所がある」と訴えている。

新入山トンネル建設のため岩盤の補強が行われている工事現場