2025.11.17 みすず野
2025/11/17
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健康診断を受けるたびに、注意事項として、体を動かすことは生活習慣病の予防や改善につながるから、毎日40分から60分歩きなさいと診断結果に書き込まれる。何年も言われ続けているので、理解しているし、そこそこ努力もしているがなかなか結果に結びつかない◆ウオーキングと表現するとどこかに義務感が漂って気持ちが沈む。散歩と言い換えると、気楽な空気に包まれるようで、ちょっとそこまで行ってみようかという気になる◆俳人の高浜虚子は昭和19(1944)年9月に、東京から小諸市へ疎開した。信州の冬は東京に比べ寒さが厳しい。雪も積もる。外に出にくい環境で、虚子は「廊下散歩」を思いつく。長さ約4.5メートルの廊下を朝食後1時間昼食後30分間、日課にして歩いた(『鉄棒する漱石、ハイジャンプの安吾』矢島裕紀彦著、NHK出版)◆1キロ15分という平均的歩行速度を基準に、廊下を1時間半歩くと1320回以上行き来する計算に。著者は「虚子の八十五歳の長命のひとつの要因であったことは否定できない」という。4年近く暮らした小さな建物は「小諸高浜虚子記念館」として保存・展示されている。



