2025.11.8 みすず野
2025/11/08
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亡くなる前日に、塩尻市郊外の高ボッチ高原を一緒に歩いて回った。同市片丘の古谷孝雄さん。90歳とは思えないフットワークと記憶力に舌を巻いた。目指す地点へ案内してもらうたびに微笑を浮かべて「懐かしいなあ」とつぶやいていたのが印象的だった◆訃報が届いたのは取材の翌々日。何かの間違いだと思った。あんなに元気だったのに-。筆者の質問に正面から向き合い、丁寧に答えてくれた姿がまぶたの裏に浮かんだ。太平洋戦争や朝鮮戦争に結びつく話題だったが、反戦や平和を願う言葉は力強かった◆取材の依頼で自宅を訪ねた折、現地へ同行してもらえるか尋ねると、快諾してくれた。楽しみにしてくれていたようで、カレンダーには取材を約束した日付のところに大きな丸が書かれていたと、亡くなってから遺族に伺った。ありがたいような、切ないような複雑な感情が込み上げてきて目頭が熱くなった◆ぶっきらぼうだが、言葉の端々に情を感じた。こんな風に年を取れるなら長生きしたいなあとも思わせてくれた。身をもって「最期まで命を燃やして生きろよ」と教えていただいた気がする。ありがとうございました。



