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2025年

2025.10.17 みすず野

2025/10/17
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 「松本は私の故郷」と、グラフィックデザイナー、作家の太田和彦さんは『大人の居酒屋旅』(新潮新書)の1章を書き出す。なじみの居酒屋で尋ねる。「今年のきのこはどう?」「だめずら、きのこは一年おきだで」◆翌日、別の居酒屋ののれんをくぐる。昨日の店の受け売りで「『今年のきのこはだめらしいね』」と話すと『そうなんです、記録的な不作で』と言いつつ」、きょう手に入った2種類の雑キノコを貴重だといいながら主人が出してくれた◆「その山の香りよ。子供のころ、よく父と山にきのこ採りに出かけ、最初はわからないが『ほれそこにある』と教えられると、どんどん見つかった」と回想。家に帰ると「父は新聞紙をひろげて丹念にごみを取り、母に焙ってもらって酒の肴にしていた」◆昨日、朝食前に雑木林の入り口でハナイグチを数本見つけた。傘の直径が10センチ以上ある大きさで、輝くようないい色をしている。日曜日には1本もなかったから、わずかの間に大きくなったのだろう。その成長の早さに驚く。この場所しか知らないが、今年は当たり年かもしれない。味を楽しみにしながら家で新聞紙を広げる。

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