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2025年

2025.10.15 みすず野

2025/10/15
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 週刊誌や実話誌を中心に、暴力団関連の記事を寄稿してきた鈴木智彦さんが、52歳でピアノを弾こうと思い立ち、音楽教室に通った日々をつづった『ヤクザときどきピアノ増補版』(ちくま文庫)が面白い◆鈴木さんは潜入ルポで知られたがABBA(アバ)のヒット曲「ダンシング・クイーン」をピアノで弾きたいと、教室に通い個人レッスンを受ける。猛練習を重ねて10カ月後、発表会に臨む◆「正直、本番になればそれほど緊張しないのではないかと高を括っていた。しかし、いちど躓いた時、手がはっきりと震えだした。自分の身体が制御できなかった」。その結果「数小節を見事にぶっ飛ばして演奏を終えた」。言いたいことは一つだけ。「『いつも練習の時は弾けるんです!』ただそれだけである」◆20年以上前、ライブハウスで覚えたばかりの弦楽器を弾いてくれと頼まれ、喜んで出かけた。最初に外国人が打楽器のジャンベを演奏。その力強いリズムで会場が盛り上がり、大騒ぎでのりまくる全く意外な展開。直後にステージに上げられ自分を見失って演奏はぼろぼろ。あの時「練習の時は弾けるんです!」と言いたかったなあ。

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