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2025年

2025.10.12 みすず野

2025/10/12
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 初夏や中秋に町会の一斉清掃があると、隣組ごとにまとまって作業する。近所に住む親近感もあって声を掛け合いながら、手分けして道路端の草刈りや用水路の泥上げに汗を流す。なかには、おしゃべり好きな人がいて、あれこれ冗談を大きな声で言い、場を和ませてくれる◆隣組という「組織」ができたのが、戦時中と知ったのは今夏だった。戦争体験者の話を聞く会に出掛けた折、資料の『「写真週報」に見る戦時下の日本』(世界文化社)から抜粋した「知っておきたい戦中用語」に載っていた。解説に「非同調者(非国民)を発見するために生まれた町内会の下部組織」とあり、持っていたイメージと違って戸惑った◆隣組といえば、不幸ができたとき、葬儀・告別式の手伝いに出て助け合う良いイメージを持っていた。新型コロナの流行以降、式の在り方が大きく変わり、隣組の出番はほぼなくなった。喪主が業者を頼るようになったのも、出番をなくしていったと感じる◆出発は、相互監視の嫌な存在だった。一時、相互扶助を体現する良い組織となった。そして「個」が強く尊重される時代を迎えて、程よい距離感が悩ましい。

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