2025.10.1 みすず野
2025/10/01
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きょうは全日本コーヒー協会が昭和59(1984)年に制定した「コーヒーの日」。この月がコーヒー豆の取引や収穫期の区切りとなることから、その最初の日が選ばれた◆コーヒーを飲ませる喫茶店に関する文学作品を集めた『喫茶店文学傑作選』(中公文庫)の編者の林哲夫さんは「喫茶店と文学は相性がいい」という。「喫茶店には人が集まる。見ず知らずの通りすがりもあれば、常連もいる。人の交差するところに物語が生まれる」「ほんの束の間、気兼ねなしに人がとどまっていられる。そんな居場所はそうあるものではない。そこに文学者たちは惹きつけられる」と◆仏文学者・山田稔さんの「街の片隅で」は「市のはずれにひっそりと暮らすのが気に入っていても、たまには街の空気を吸いに出かけたくなる」。月に一度ほどは街に出る。繁華街は避け、なじみの本屋に寄り、行きつけの喫茶店へ。買った本を広げ、客の会話を聞く。「私のなかを片隅の小さな時間が流れていく」◆市の外れに暮らしているのは変わりないが、いくつかあったなじみの喫茶店は閉店した。近年は家でコーヒーを入れながら、買ってきた本を開く。



