2025.9.26 みすず野
2025/09/26
後で読む
「うちのかみさんが」というせりふは、テレビで放映された「刑事コロンボ」の主人公が必ず使った。米国ロサンゼルス警察のコロンボ刑事。ピーター・フォークさんの当たり役だ◆日本語の吹き替えは、俳優の小池朝雄さん。「うちのかみさん」は、英語では「my wife」と言っている。作家の片岡義男さんは「刑事コロンボ」のDVDを全て所有している友人が、この日本語にした人をたたえていたと書く(『僕は珈琲』光文社)◆小池さんの声でずっとコロンボに付き合ってきた友人にとって、コロンボは小池さん。それはこのシリーズを見てきた多くの人にとっても同様だろう。「何年かあと、ピーター・フォークの声を映画館で聴いて、こんな声だったのかと驚愕したという」。その声は小池さんの低音とは異なり、どちらかというと甲高く、少ししゃがれている◆声の記憶というのは普段は忘れていても、思い出そうとすると驚くほどはっきりとよみがえる。随分以前に亡くなって、容姿はおぼろげになっても、その声を今でも思い出せるという人が少なくない。彼岸に久しぶりにゆっくり墓参りをしながらその声を聞いた。