2025.9.22 みすず野
2025/09/22
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ようやく空気が入れ替わったなと感じたのは先週後半だった。早朝、玄関から一歩踏み出すと、半袖では肌寒く感じた。これまで経験したことのないような耐えがたいほどの暴力的な暑さの夏とも、どうやらようやくこのあたりでお別れのようだ◆「南向きの縁側へ日かげが深くさしこんで来る。踏み立つる足の裏は焦げつくように熱いけれど、もうどんな日中でも、仕事をしている手の甲が汗でじっとりなるというようなことはない」と日本画家の鏑木清方は「秋」という短い随筆に書いている(『鏑木清方随筆集』岩波文庫)◆昭和9(1934)年の1編。「暑さ寒さも彼岸までという、寒さから解放されるよろこびも、暑さを後にふりすてたる気軽さも、勝り劣りはないとはいうものの、秋の彼岸のさわやかさは、思索を重んずるものにとっては、たやすく得がたい好季節である」と続く◆暑さからの解放はほっとするが、名残惜しさも、これまでの夏に比べればそれほどでもないが、あることはある。それが秋の入り口にようやく立つ多くの人の思いではなかろうか。「きのうの夏を思い出させるもの」も一つ二つとなくなってゆく。