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2025年

2025.9.12 みすず野

2025/09/12
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 「麻績村」と書かれた紙片を手にデスクがその読み方を尋ねた。入社間もない時期で、県内の村と知っていたが、どこにありどう読むのかは知らなかった。適当に答えて恥をかいた。デスクは叱るわけでもなく、読み方を教えてから「分からないことは何でも聞け」と取材の心構えを説いた◆「白馬岳。最近はハクバと読む輩が多くて困る、とベテラン登山家たちは口を揃える。『しろうまだけ』と読みなさい、と」。地図研究家の今尾恵介さんは著書の『ふらり珍地名の旅』(ちくま文庫)でこう書き出す◆しかし、村の名前が北城村から白馬村に変わったのが昭和31(1956)年。「大糸線の駅名も後に信濃四ツ谷から白馬と改められたのだから無理もない」という。その上で「同じ地名を将来に伝えていくこと。これは当然の営みではないだろうか」と◆平成の大合併や住居表示の変更で、自治体の名称や地名が消えた例は少なくない。長い間使われてきた地名を残そうと、自治組織にその名を付けたり、団体名に冠したりする例もある。今尾さんはいう。「地名はたまたま今を生きている地元の現代人だけのものではない」のだと。

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