2025.9.10 みすず野
2025/09/10
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終戦後、男が敗戦に打ちひしがれていたとき「家庭のかあさんたちは『この子に何とか食べさせなきゃ!』の一念で食事作りに立ち向かっていました。家庭の料理作りはほとんど女性が担っていましたから、彼女たちは立ち止まってなんぞいられなかった」と食文化研究家の魚柄仁之助さんは『台所に敗戦はなかった』(ちくま文庫)でいう◆戦後間もなく『暮しの手帖』を創刊した花森安治は「おそらく、一つの内閣を変えるよりも、一つの家のみそ汁の作り方を変えることの方が、ずっとむつかしいにちがいない」(『灯をともす言葉』河出文庫)と書いた◆その解説で料理研究家の枝元なほみさんは「政治も、国のあり方も、世のあり方進み方も、キッチンとつながっている。主役である私たちの、食べて生きていくことを支えるものだからもしそこが腐ったら、いくら料理しようとしてもまともな一皿ができあがるはずはないのだ」と語る◆石破茂首相退陣に伴う総裁選が伝えられる。1年前に見た顔ぶれが並ぶ。同じところを1年かけ回っているかのような感覚にとらわれる。この国をどうしようというのか。その主張を見極めたい。