2025.9.8 みすず野
2025/09/08
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いずれは粗大ごみとして処理するつもりで、庭の隅に古い畳を置いた。その年の秋に畳からキノコのシメジが次々に生えてきた。取っても取っても生えてきて、何度もおいしくいただいた。キノコ栽培はこうやればいいのかもしれないと、次の年も楽しみに待った◆ところが、その年は1本も姿をみせず、翌年も同様。ときどき水をかけたりしたが、数年待っても二度と生えてはこなかった。今でもあれはどういうことだったのかと、キノコの季節が近づくと思い出す。中国の古典『韓非子』から着想した唱歌「まちぼうけ」の歌詞のようだ◆作家の水上勉さんは、軽井沢のカラマツ林でハナイグチを見つける楽しさを語る。「大きいのになると、松茸にまけない大傘をひらいているが、やはり喰いごろは、小さいころ」(『土を喰う日々』新潮文庫)だという。「つるりとぬめった感じのを洗って、よくゆでたのを大根おろしにまぜて喰う」のだと◆久しぶりにまとまった雨が降った。あまりの猛暑でキノコがどうなるのか気になるが、今年も山の恵みに期待しよう。枯れ枝や落ち葉を踏んで里山を歩くのは楽しい。キノコがあればなおさらだ。