2025.9.4 みすず野
2025/09/04
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昼食を取ろうと入った店に「きょうからサンマ始めました」と張りだしてあった。定食のメニューに加わったサンマは少し焼き目がついて、添えられた大根おろしとともに食欲をそそった◆サンマは『明鏡国語辞典』(大修館書店)に「夏から秋にかけて北の海から南下するサンマ科の海水魚。背が暗黒色、腹部が銀白色の体は刀状で、細長い。秋の味覚の一つ」とある。漢字の秋刀魚は、わずか3文字でこの説明をほぼ表している◆スーパーの鮮魚売り場には、すらりと伸びて刀剣のように輝くサンマが並ぶ。その姿に思わず見入ってしまう。絵本作家のおーなり由子さんは、初サンマを「てらてらとひかって魚屋にならぶ銀色の刀。手に刺さりそうなほど、するどく口をとんがらして」と書く(『ひらがな暦』新潮社)。今年は身が太った形のいいものが多いようだ◆料理研究家の辰巳浜子さんは「秋刀魚を食べて何よりも嬉しいのは、あの骨ばなれのいいことです。真中から箸を入れて四つ割りにすると、身はきれいに取れて、中身が行儀よく並ぶ、その瞬間が私は大好きです」という(『料理歳時記』中公文庫)。今夜はサンマですね。