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2025年

2025.9.1 みすず野

2025/09/01
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 関東大震災は大正12(1923)年のきょう起きた。震災直後から朝鮮人が放火した、井戸に毒をまいた、大挙して攻めてくるなどの妄説が流れ、自警団などの朝鮮人殺害が続いた。なぜか◆その前に日本は韓国を併合。作家の小沢信男さんは「とうぜん起きる独立回復運動を、弾圧しまくり殺しまくって十三年と三日目。ただではすむまいとつのる恐怖心に、一挙に憎悪の火がついたのだな」(『俳句世がたり』岩波新書)と書く◆穂高出身の相馬愛蔵が興したパン店の中村屋は震災3日後、新宿の店を再開。翌晩、愛蔵の妻・良(黒光)が店員全員を集め話した様子を臼井吉見は小説『安曇野』(ちくま文庫)第三部で描く。「朝鮮人に不穏な動きがあるとか何とか言われているようだけれど、そんなばからしいことがあるはずがない」「わたしども力を合わせて朝鮮人を守ろうじゃありませんか」「不安におびえている朝鮮人を見かけたら、中村屋へおつれして下さい」◆小沢さんは萩原朔太郎の詩を引く。「朝鮮人あまた殺され/その血百里の間に連なれり/われ怒りて視る、何の惨虐ぞ」。震災から102年。ヘイトスピーチは絶えない。

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