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2025年

環状路線が渋滞緩和の鍵に まつもと道路交通考・第5部⑤ 有識者が考える国道19号対策

2025/08/30
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 松本市内の国道19号拡幅事業(4車線化)について、国の第12次交通安全基本計画策定のための専門委員会議座長で、道路問題に精通する松本深志高校出身の赤羽弘和・千葉工業大学教授は「松本市の19号沿線には商業施設などがびっしりできていることを考えると全線拡幅は非現実的」と指摘する。
 その上で①渋滞先頭交差点の流入部の車線数を増やす②右折車線内に待機車列が収まらず頻繁に直進車線まであふれ出しているか、右折車線未設置の渋滞先頭交差点では信号サイクル長(青―黄―赤と変わり、再び青になるまでの時間)を短くする③迂回利用できる環状路線を整備し案内を強化する―といった対策で「渋滞をかなり改善できる」と提案する。
 ③について実効性を探ってみた。例えば塩尻市役所(塩尻市大門七番町)を起点に国道19号平瀬口交差点(松本市島内)を目的地としてスマホで経路(高速道路を使わない)を検索すると、奈良井川の堤防道路を使うルートと、西側にやや大回りしてアルプスグリーン道路―県道松本環状高家線を使うルートが候補として示される。両ルートとも、所要時間は40分程度だ。
 第1候補は距離が3キロ短い奈良井川堤防道路となるが、国道19号渚1交差点に合流し渋滞が懸念される。アルプスグリーン道路―県道松本環状高家線が迂回路として適していると判断した。
 赤羽教授は、長野道のバイパス利用促進も有効だとする。ETC搭載車で通行料金の一部が還元される料金制度「平日朝夕割」(月6回以上30%、10回以上は50%が翌月還元)を活用し、国と県、沿線自治体が負担金を出し合う仕組みを作り、還元率を大幅に高められないかという。道路建設にかかる巨額の費用と年月を考えれば、はるかに安い。
 赤羽教授は「一般道路の日常的渋滞では、道路の交通処理能力に対する交通量の超過率はたかだか10%程度。超過分の半数が迂回すれば国道19号の渋滞による時間損失もほぼ半減し、渋滞が誘発している交通事故もかなり減らせる」と話す。
 現在、工事が進められている国道19号松本拡幅事業の渚3―宮渕本村間(1.6キロ)以外の具体的な計画は俎上に挙がっていない。こうした意見を参考に行政が研究を進め、次を見据えていくことが現実的ではないだろうか。
(第5部終わり)

国道19号の平瀬口交差点(北から)。拡幅事業で都市計画決定された区域の北端になる

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