2025.8.29 みすず野
2025/08/29
後で読む
9月が目の前だというのに、暑さはまだ続く。それでも朝晩は涼しく感じる日が増えた。耐えがたい暑さが続いた夏も、そろそろ次の季節への準備に入ったのかもしれない◆セミが元気に鳴いているが、コオロギなどの鳴き声も聞かれるようになった。「日本の古典の中では、単に『虫』といえば、まず大抵の場合、秋の鳴く虫を指す」と、仏文学者の奥本大三郎さんはいう(『虫の文学誌』小学館)◆平安時代には虫の声を楽しんでいた。虫を捕るには「虫吹き器」という竹筒の片方に薄絹を張ったものを使った。筒を虫の上に伏せ、虫が上に登ったところで筒の口を袋などに向け、薄絹の方から吹いて捕る。捕った虫の鳴き声を楽しむことを「虫選」といったという。「日本には、鳴く虫を題材にした絵や歌が大変多い」そうで、一例として香川景樹(1768~1843)の「夜なれば花の千種はみえねども色々に鳴く虫の声かな」を挙げる◆涼しい夜、エアコンを止めて外の空気を入れると、すぐ近くからコオロギの鳴き声が聞こえてきた。都心のタワーマンションでもこの心地は味わえまいと思うと愉快で、ちょっぴり酒量が増えた。