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2025年

2025.8.19 みすず野

2025/08/19
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 「上諏訪駅前から松本行きの国鉄バスに乗り、塩尻峠で下車して高ボッチに向かった。その時の記録がアルバムに残っている」と、松本市出身で24歳で霧ケ峰に山小屋を建てたエッセイストの手塚宗求さんは書く(『諸国名峰恋慕』山と渓谷社)◆昭和37(1962)年の10月。「上諏訪、松本間の国道は未舗装で、まさに田舎のオンボロバスが砂塵を上げてガタガタと塩尻峠を喘いで登った」。ガイドブックの取材で「塩尻峠から高ボッチ、鉢伏山、美ケ原と単独で歩いた」。2日間の山中、一人のハイカーにも出会わなかったという◆未舗装の国道20号は記憶にない。高ボッチへ向かう道も、山頂近くの展望台も、誰にも会わないということは今はまずない。特にこの季節は一年で最もにぎわう。放牧された牛、視界が開けた一帯、眼下には諏訪湖が水をたたえる。天候に恵まれればその向こうに富士山が見える◆レンゲツツジの撮影に足を運び、夏は大勢が詰めかけた草競馬大会の取材が楽しみだった。近年、キャンプエリアの整備などアウトドア関連の整備が進む。手塚さんが今、山頂に立たれたら、どんなエッセーを書かれただろう。

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