2025.8.17 みすず野
2025/08/17
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民話研究や児童文学の著書が何冊もあって、自宅へ何度か取材に伺った。松本市中山の元小中学校教諭・髙田充也さん。先頃、97歳で鬼籍に入られた。良い意味で昔ながらの「学校の先生」という雰囲気が漂う方だった◆筆者が伺うと、教え子が訪ねてきたかのように、温顔で出迎えてくれた。新しく出版された本の話を聞き始めると、一転、表情が引き締まった。言葉を選びながら丁寧に話す姿を思い出す。本を何冊出版しようとも、一冊ずつに思いを込めて執筆に当たっていたのがよく分かった◆取材が一段落ついた後、世間話になったことがあった。話が進むうちに、筆者が中学生だったころ、同じ中学校の教頭だったのが分かった。風紀が乱れていた学校だったため「赴任を知ったとき、嫌で嫌で仕方なかった」と本音が漏れた。「すみませんでした」と当時の生徒を代表して謝ると、「あっ、あなたに言っているわけでなくて…」と返されて、笑い合った◆ここ数年、お会いする機会はなかった。訃報に接し、背筋を伸ばして、相手と話す姿がよみがえった。まっすぐに生きる大切さを教えていただいた。ありがとうございました。