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2025年

2025.8.13 みすず野

2025/08/14
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 夏の夕方、空が急に暗くなったと思うと、突然激しく降ってくる雨が夕立だ。夕立を降らせる入道雲は、直径が10キロほどと小さく、その真下にしか強い雨が降らない(『雨のことば辞典』倉嶋厚・原田稔編、講談社学術文庫)◆浮世絵師の歌川広重の表現力と観察眼を存分に味わうのはまず雨だと、信州大学で学んだ気象予報士の長谷部愛さんはいう(『天気でよみとく名画』中公新書ラクレ)。「大胆であると同時に繊細な雨の表現は、人を惹きつけるものがあります」◆「東海道五十三次 庄野 白雨」は、現在の三重県鈴鹿市を題材にした作品。天保4(1833)年頃描かれた。白雨は夕立、にわか雨のことで、目の前が白く見えるほどの激しい雨の意味。画面を斜めに横切る無数の線、画面右上から左下には薄墨の線が走る。「こちらにまで雨音が聞こえてきそうな勢いを感じさせます」と◆こうした雨の時に吹く強い風を木の揺らぎや坂を下る番傘の男などで表現。その雰囲気を伝えるための「すべての要素が詰め込まれている」と説く。暑かった夏の午後をたちまち涼しくしてくれる夕立。雷とともにできればほどほどにと願いたい。

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